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第75回 東部富士五湖自転車旅行

2010/11/13


○両国橋→山伏峠○

最後はかくもあっさりと、山梨県の入口へと辿り着いた私であったが、その後はひたすらにだらだらとした上り坂が続いた。
特に最初の急斜面、急ヘアピンの上り坂は強烈で、一番軽いギアでも全く前に進まず、思わず押してしまいたくなるほどだった。
登っている途中、とにかく目につくのが、至る所に
「キャンプ場→ すぐそこ」
と書いてある看板である。
ここ“道志みち”はどうやらキャンプ場のメッカであるようで、夏場のハイシーズンにはさぞかし家族連れで賑わい、そりゃあもうバーベキューやらキャンプファイアーなどで、河原が賑わうことが推察されたが、今は残念ながら河原の方を覗き込んでも、人の気配は全くなく、ひっそりとしているようだった。
しばらく走ると、林道の影から川に吊り橋が架かっているのが見えたので、早速興味をもった私は、取り敢えず吊り橋のところまで走り、自転車から降りて、吊り橋の真ん中まで行ってみることにした。
全く、こんなものにすぐに飛びつくとは私も子供である…。
つくづく私は自身の精神年齢のあまりの低さに落胆しつつも、気付けばちゃっかりと吊り橋の真ん中までふらふらと歩いていた。

ははは…

はぁ (タメ息)

しかし、この底知れぬ好奇心こそが旅を何倍にも楽しく感じさせるのだ、と今はポジティブに考えることにする。
…何だか、少し気が紛れた気がした。笑

県境1県境2

さて、吊り橋から下に眼をやると、随分とまた谷底に川が流れているのを再度認識した。
先程まで今、遥か下を流れている道志川と同じ高さまで下ったというのに、こりゃまた結構なところまで登って来たものだ。
手を滑らしてカメラを落としてしまうんじゃないか?
と、ほんのちょっぴりだけ不安になった私は、注意深く吊り橋からの景色を撮影して、再度自転車に跨り、走り出した。
写真を撮る為、カメラを握っていた手は震えていた。

吊り橋1吊り橋2

再度自転車に跨り、走ることしばらく、ちょっとした見晴台なるものを見つけたので、ちょっとした休憩を挟むことにした。
別にこれといった絶景が見られるポイントではないようだったが、それでも、数脚のベンチと車が数台駐車できるスペースが確保されているようだった。
とある1つのベンチでは、渋面のおじさんが楽譜を前にし、ホルンを吹いている…。

ホルン!?

( ゚д゚)ポカーン
こ、こんなところで、な、何故だろうか…、
ホルンを吹くおじさんに気を取られていると、近くにいたおばさんに声を掛けられた。
ほらぁ、富士山が見えるわよ!」
そのおばさんが指差した先には確かに、全体的な山体こそは手前の山々に隠れていたものの、山頂部分をちらと覗かせる富士山の姿があった。

かくして私は、休憩中に出会ったこのおばさんと、少々の立ち話をすることとなったのである。

見晴台

話によるとおばさんは、相模原からドライブがてらに、ここ“道志みち”へと紅葉を見るため車でドライブしに来、たまたま私と同様にここで小休憩している、とのことだった。
話を進めていくうちに、開放感溢れる青空の下、ホルンを吹く謎の男性は、このおばさんの夫だということが判明した。
随分と洒落た趣味をお持ちのようで…(´∀`;)

して、今度は私が、自転車で橋本からここまで登って来たことを伝えると、おばさんはさぞかし驚愕したようで、
元気が出るようにと、かりん糖と水筒に入ったお手製のブレンドコーヒーを差し入れとして譲って下さった。

後、相模原のどの辺りに住んでいるのか、
と、凄く私はそのおばさんに興味を持たれたが、私が否定し、埼玉から自転車を電車に乗せて来たことを伝えると、話題は埼玉県の観光名所についての話になった。
しばしの会話の後、そろそろ出発せねばと私がおばさんに伝えると、おばさんは私に、先程のかりん糖に加えて、ハッカ飴とキャラメルを数個譲って下さった。

「頑張れ」

のおばさんのエールに送られた私は、先を目指す為、再び自転車を漕ぎ出した。
普段、日常の中でなかなか触れることのない、些細な人の温かい心にちょっぴり触れることが出来、なんだか少し嬉しい気持ちになった。

おばさんと別れてから少しで、私は村内の集落まで辿り着くことが出来た。
ここ道志村は、道志川や“道志みち”沿いに、東西に非常に長く集落が続いて行くのが特徴だ。
まず、私がいる久保の集落から村役場までは、およそ5km。
そこから集落の西端である道の駅「どうし」があるところまでは5kmで、東西におよそ10kmの長さにわたり集落が点在することになる。
人里まで出ると、激しい凸凹の道は落ち着いて、緩やかに登り、時々急な登りが待ち受ける、といったような先程より随分と走りやすい道となる。
傾斜の厳しい坂道を足に力を込めて一生懸命登っていたところで、後ろから声を掛けられたので、
後ろを振り返ってみると、先程のおばさんが乗っている車が、颯爽と私の横を追い抜いて行った。
おばさんは私に向かって、陽気に手を振ってくれているようだった。

道志村1道志村2

そこからしばらくは、緩やかになった道並みも手伝って、
ペースは至極快調で、
あっという間に道志村役場前まで到着した。
ところどころで綺麗な景色があったら立ち止まって、その景色を写真に収める。
と、いうような感じで、引き続き私は、そのまま集落の西端の道の駅「どうし」があるところまで、絶好調状態を維持したまま走り進めていった。
車ならすっとばしてしまうようなトコロでも、自転車ならさっと立ち止まり、美しい景色にゆっくり目を向けることが出来る。

まさに自転車ならではの醍醐味だ。

道志村3道志村4

そんなこんなで、絶好調をキープしていた私は、かれこれ1時間以上ノン・ストップで走り続けていたところであったが、
当時の私は、

いやぁ、まだまだ余裕っしょ(・∀・)ニヤニヤ
というか、今回の1000mの登坂は一瞬だったな(キリッ

という心持ちであったので、丁度右手にあった道の駅を華麗にスルーして先へと進むことに。
しかし私は、この「道の駅」からの先で、“道志みち”が決して甘くない道であることをまざまざと実感させられるのであった…。

道の駅「どうし」を過ぎて、先程同様にノリノリで走ること少し、次第に足が強張り、ペダルが回らないことに気付いたので、私はヤマザキショップの前で小休憩を挟むことにした。
休憩がてらに地図で、自らの現在位置を確認すると、意外と山中湖まで近くまで来ていることを知ったので、更に元気が出た私は、再び自転車に跨って、一気に山中湖を目指すことにしたのだが…、

す、進まない…

なんか、さっきより坂道がビルドアップしているような気がするんですけど…(#^ω^)

気付けば、さきほどまで道沿いあちこちに点在していた民家はすっかりなくなり、道は深い山奥へと続いていたわけで…
そこから先はまさに死闘であった(笑

まずはしばらく、なかなかに歯ごたえのある傾斜の山道が続く。
この時点でもかなりの体力出費である。
しかし、私は次のブラインドコーナーをやっとの思いで登り切った後、目の前の光景に絶望した。

きれーに一直線の上り坂。

なんて、果てしないんだ…
嗚呼、しばらく前に私の横を通り過ぎて行ったバイクがあんなところに…


一体何回途中で立ち止まっただろうか。
案の定骨の折れる傾斜ではあったが、やっとの、やっとの思いでこの直線坂を登り切った。
とにかく苦心の思いで、続くペアピンを登り切ると、

|ω・`)チラッ
一瞬の不安がよぎる…

ちらと見えた先には、そのまさかとは思ったが、
案の定、そのまさかだった…

正解です!!
では再び登場して頂きましょう!!

一直線の上り坂の登場です!!
…しかも、よく見るとなんか途中で一段階、更に傾斜が上がっている!?

終わった…



さすがに頭の中が真っ白になった。
さっきも何回も休憩して必死の思いでストレートの上り坂を登ったというのに…(泣)
死ぬんですか…
私ゃ、ここで死ぬんですか…


重い。
ペダルが重すぎる。
まず、踏み出しから全然前に進まない。

私の心はもはやここで完全にポキっと折れた。

それからの私は、もはや1分もの登坂を続けることが出来なかった。
休んでは、水を飲み、休んでは、水を飲み…
の繰り返しで、1回の登板で全くと言っていい程、距離を稼ぐことが出来なかった。
莫大な時間を割いて、一直線のストレートの半ばまで辿り着き、更に莫大な時間を割いて、もう1段階ビルドアップした直線坂を登って、オーバー180°の超ヘアピンカーブを曲がり、登り切ったところで、峠の終焉を知らせるトンネルまで辿り着くことが出来た。

山伏峠。標高1080m。

私が経験した様々な峠の中でも、屈指の辛さであった。
今し方、思い出しながら執筆している最中でも、もう登りたくないと思う。
頭はクラクラしていた…が、私はトンネルを潜り、晴れて山中湖村に到着することが出来たのである。

山伏峠1山伏峠2

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